LowBlow

「カフェおじさん」

絶賛 発売中!

卓越した技術とセンスに支えられたフニョフニョした音楽。ジャズ界のクレイアニメーション、LowBlowの(お子さまにも安心してお勧めできる)デビューアルバム!

ON-23 Offnote 1997.12.8
(株)メタ・カンパニー(03-5273-2821)

¥2,800(税抜き)


水谷浩章(Bass)
外山明(Drums)
斉藤良一(Guitar)
青木泰成(Tromborne,Keyboard)
松本健一(Sax )
竹野昌邦(Sax,Flute)


1 とらぬ狸
Unhatched chickens
作曲:水谷浩章 Time [5:48]
oto.gif.au (284KB)
2 カフェおじさん
Mister Cafe
作曲:水谷浩章 Time [7:22]
oto.gif.au (347KB)
3 ぶたぶた
Buta Buta
作曲:水谷浩章 Time [6:20]
oto.gif.au (410KB)
4 バラード 2
Ballade II
作曲:水谷浩章 Time [8:24]
oto.gif.au (410KB)
5 ジャズ外山流(バイオレット将軍)
General Violet
作曲:外山明 Time [3:41]
oto.gif.au (315KB)
6 ゴー・ラウンド
Go Round
作曲:水谷浩章 Time [5:52]
oto.gif.au (315KB)
7 スペース・マフィア
Space Mafia
作曲:外山明 Time [5:57]
oto.gif.au (315KB)
8 ヨーデル
Jodel
作曲:水谷浩章 Time [4:57]
oto.gif.au (347KB)
9 ゴブリン・ダンス
Goblin Dance
作曲:外山明 Time [5:13]
oto.gif.au (315KB)
10 不器用な親父
Clumsy Daddy
作曲:水谷浩章 Time [5:35]
oto.gif.au (315KB)
Total Time [59:14]


「ダニーのローブローは粘土のパンチによって」

 「ローブロー」という単語は、ボクシング用語で、事故または故意に対戦相手の下腹部や金的を打つ事を指す。特に故意だった場合には、それによって対戦相手の戦意を喪失させ、ペナルティ覚悟で不利な戦局を強引に打開すること(希にそのまま試合に勝つ事すらある)を意味し、ダーティーでハングリーなイメージを持つボクシングという競技の中でも最もダーティーでリスキーな用語である。

 又、リーダーでベーシストである水谷浩章は今でこそ誰も呼ばなくなったとはいえ、過去「ダニー」という愛称があった。これはユダヤの預言者ダニエルの事でも、「ベニスの商人」の登場人物の名から転じて「名裁判官」を一般的に指す事に成ったダニエルの愛称でもなく、水谷の「谷」を取り、「タニー」を濁音化したものと考えるのが妥当だろう。濁音化の効果は不良っぽさ、荒々しさ、汚らしさなどへの志向である。

 「ローブロー」「ダニー」ともに水谷が若い頃に世話になった人達によって命名されたものであるが、彼等のこの命名時に於けるメンタリティは、赤塚不二夫が自分のアシスタントであったとりいかずよしが独立する際に「おまえの絵はきれいすぎる。お行儀が良すぎる。そんなんじゃこの生き馬の目を抜く少年漫画界ではやっていけない。今後オマエはウンコのマンガしか書いてはいけない。」と言い放った時のそれとほぼ一致していると予想される。「水谷オマエはちょっとアクが弱いぞ、優等生っぽすぎる。そんなんじゃこのジャズ界ではやっていけない。いいか今後オマエは水谷じゃなくてダニーだ。それと、オマエのバンドの名前はローブローにしろ、うんそれがいいそれがいい。その位のパンチがなきゃあ」

 とりいは後に代表作「トイレット博士」を著し、70年代初期の少年漫画史にその名を刻む事になる。「可愛らしい、清潔な絵柄でウンコを喰う女の子を執拗に描く」という「強制された汚濁(猥褻さ、粗野さ)」と「持って生まれた柔構造」の共存は全国の子供達にトラウマティックな衝撃を与え、「トイレット博士」はカリスマ化した。

 しかし水谷は「強制された汚濁としてウンコを描くこと」をよしとはしなかった。彼はダニーという愛称を自然に廃れるままにし、盟友の外山明と共に、自分なりの全く新しいウンコの描き方を発明したのである。そのウンコとは「幼児向けのクレイ・アニメーションの中のピンク色のウンコ」だった。

 クレイ・アニメーションはピングーを始め、ティム・バートンの「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」古くはヤクルトミルミルのCM等々、粘土で作ったキャラクターを、気が遠くなるような手間(1秒撮るのに何十時間という)をかけてヒトコマずつ撮影するアニメーションのジャンルである事は御存知であろう。

 LowBlowの演奏に一貫して流れるフニャフニャ感、ピローンピローン感、ホワワ〜ン感、ブッカブッカブー感、ポッポコフヨーン(以下略)又、逆に異常な程に正確無比なスピード感、無限に展開、逸脱するかに見えてやがて見事に収束して行く物語の驚異的な整合性は、適当に遊んだ脱力セッションや、目と目で合わせる慣れあい的セッションによるものではなく、実は東京のジャスクラブシーンを代表する屈指のテクニシャン達の研ぎ澄まされた確実な技術とセンス、10年以上周到に練り上げられた作曲技法等の裏打ちの結果、ポワ〜ッと、そしてビシッと達成されたものである。稚拙さに開きなおった教養否定主義や、デタラメに霊感が宿るとする疑似宗教的音楽が「子供が遊んでいる所そのものを見せる行為」だとしたら、我々がLowBlowから見せられるのは、チーフアニメーターの水谷以下、芸術家の域に達したアニメーター達による上質のクレイアニメーションに例えられよう。

 クレイアニメーションの世界では、キャラクターの肉体の融解、変形、は言うに及ばず、時に世界そのものの変形、融合に至り、グロテスクさと可愛らしさ、ピュアさと猥雑さ、自由と束縛等の融合が起こり、それらが生まれるのは何よりも手仕事による完成度によってなのだ。そして何より総てのクレイアニメーションが持つひとつの祈りにも似たメンタリティ、我々がクレイアニメーションを前に必ず心の琴線に触れずにはおけないあの気持ち、即ち「総ての子供達(無垢なるもの)への愛情と希望。そして子供に戻る記憶」がLowBlowのサウンドの隅々にもはっきりと流れている。

1997 11/13 菊地成孔(スパンクハッピー)


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zoota:http://zoota.jah.ne.jp/

Produced by 水谷浩章

Recorded & Mixed by 島田正明

Recorded at アケタの店 1997.5.26 , 8.29

Mastered by 滝口博達

Mastered at JVC MASTERING CENTER(横浜) 1997.10.23

Art & Design 山下拓也

Notes 菊地成孔

Rabel Assistant 宇波拓

Exective Produced by 神谷一義


Special Thanks
SISTEMA(澤井宏始、堀田哲也、酒井理加)、EX-PRO、YAMAHA、VATER STICKS、(株)ケープリント、META COMPANY、坪口昌恭、小林高治(SEREZA)、ハラミドリ