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音楽制作テーマ対談

インストゥルメンタル・ミュージックの魅力と可能性

金子飛鳥

今堀恒雄
TIPOGRAPHICA



どういうわけかポピュラリティを得る音楽には歌と言葉が必須のようで、現在の
シーンではインストゥルメンタル・ミュージックは貴重な存在にすらなってい
る。しかし技術習得の困難さはあるものの、音によるコミュニケーションができ
るというのは、ミュージシャン、リスナーの隔りなく興味深いことなのではない
だろうか。



 インストゥルメンタルで構成された音楽は、歌詞がない分、確かにイメージが
ふくらませやすい、言語の違いも関係なければ、楽器どうしのコミュニケーショ
ンも一見スムーズにいきそうに思われがちだ。しかし逆に、だからこそ難しい側
面もあるわけで、肉声の個性に匹敵するサウンド作りはそんなに簡単にはいかな
い。
 個性的なバンドAdiや、飛鳥ストリングス、さらにはソロ・ユニットと幅広く活
動するヴァイオリンの金子飛鳥。そして、インプロビゼイションに重点を置いた
自己のグループ、ティポグラフィカのギタリストであり、渡辺香津美やS-KEN、
ジョン・ゾーンとの共演でも知られる今堀恒雄。この2人にインストゥルメンタ
ル・ミュージックの魅力やその可能性について語ってもらった。



     その声を出すだけでその人の個性が充分出てるじやない。
     インストの場合は、まだ楽器を超えてない場合が多いでしょ。



金子:インストゥルメンタルってね、私にとっては歌を歌ってる時とヴァイオリ
ン弾いてる時とは同じなの。歌を歌うようにヴァイオリンを弾いているとも言え
るし、歌を歌う時にもヴァイオリンを弾くように歌えたらいいなと常々思ってい
て。
今堀:歌詞があっても?
金子:言葉の問題はまたあるけど、その言葉の奥にあるものと、ヴァイオリンを
弾く時の気持ちの奥にあるものっていうのは自分の中では共通しているけど。
今堀:歌うようにっていうのは、歌詞があるのと演奏(だけ)の時と、どの辺で
つながるの?
金子:歌おうとしてる気持ちっていうことだね。ただ、言葉ってひとつの単語に
対する一定の幻想みたいなのがあるじゃない、誰もが知ってるものが。インス
トゥルメンタルってそれがまだないから、その分ダイレクトにやりやすいってい
うのがあるね。本当は言葉があった時も、それができればいいなと思うけど、だ
けど、なかなかやりにくいっていう部分もあるから、その分インストゥルメンタ
ルのほうが有利ではある。
今堀:言葉に左右されないという意味でね。
金子:うん、でも私、歌詞の持つ響きっていうのが好きで。ヴァイオリンを弾く
時っていうのは、もちろん明快な言葉を意識してるわけじゃないけど、それに近
いようないろんな音色を探すっていうのは、きっと自分がふだん喋ってる言葉と
かの投影だったりもすると思う。
今堀:逆にさ、歌詞があるものもやってるじゃない。歌詞の意味で演奏が変わっ
てきたりもするじゃない?
金子:するよね。全然関係ないっていう人もいるけど、私は昔からそういうのを
気にするたちで。ヴァイオリンの響きで、いろんな色分けみたいなのを出せるだ
ろうなと思ってるけど。
今堀:そのへんのところで、Adiとソロだとどう違うの?
金子:Adiは今、もう少し明快な、歌を前にだすようなポップ・バンドを目指して
いる部分もあるからね。ソロの時のほうが、より音の持つ色合いの意味みたいな
ものを重要視して考えてる。
今堀:作曲上は?
金子:難しいね(笑)。とりあえずできちやったものを入れるしね。あんまりそ
れを意識して最初から作曲することはないけどね。やっぱりAdiの曲を作曲する
時って、ある程度バンドのメンバーの出す音っていうのが何となくシミュレー
ションできてて書いていくじゃない。ソロの時も今自分のユニットがあるからも
ちろんそうなんだけど、もう少し白紙に近い部分はある。私の場合は理論的に
作っていくんじゃなくてさ、スケッチするのと同じなの。何かここに聞こえてる
ものを拾って書いてる感じなの。でも、ティポグラフィカとかさ、全部構築され
てるじゃない。ティポの音楽聞くとさ、すごい自由にやっているように間こえる
んだけど、あれが全部書かれているものだっていうのがすごいよね。
今堀:元は鼻歌から始まってるんたけどさ。鼻歌のあいまいな部分っていうのを
譜面にして渡して、もう一回一周りして、それを自分の言葉にしてもらってって
いうことだからさ。単に伝える手段でしかないんだよね。
金子:作曲するって、結局鼻歌でしょ。自分が音と関わってるのが長いからかも
しれないけど、やっぱりインストゥルメンタルでやる時のほうが、すごく自由な
気持ちで作曲できることは確かだな。もちろん、曲の構成とか練るんだけど、言
葉を練る時より、より遊んでる感覚に近いね。それって言葉とまだ遠いっていう
ことかもしれないけれど。
今堀:変拍子も含めて細分化していったりっていうのも、演奏上、より見えてる
部分とか聞こえてる部分を広げるために、そういう細かいところまで耳がいっ
て、演奏の自由度が増したりすることが嬉しいわけであって、譜面が黒いことが
嬉しいわけじゃないから(笑)。
金子:楽器自体の可能性っていうのも、今までの決まりきったやり方じやなくて
広げていけるっていうところもあるよね、弾き方も含めて。私、歌ものは基本的
に歌をちゃんとよく聞かせてあげる伴奏が一番きれいな形だと思ってて。Adiなん
かで試みてるのはもうちょっと違うけど。でも、歌ものは歌ものとしてきちんと
伴奏を弾くほうが好き。
 歌ものとインスト・メインのものとは、そのへんをはっきり分けて考えてま
す?
金子:ふつうに他人のものを手伝う時っていうのはわりとキチッと分けます。
やっぱり歌が歌いやすいようにとか。歌の人のキャパシティ次第ですけど、歌が
歌えなくなっちゃうほどヴァイオリンが食い込んではいけないという点でね。
Adiの場合はそれをあえて崩そうとしてるところがあるんですけど。それは最初か
らインストゥルメンタルに近いような曲の作り方で歌を作っていかないとできな
いことかなと思っていて。Adiでやってるのは半分くらいそういうことですね。声
もインストのひとつとして捉えてるっていう。ボイス遊びみたいなのはインス
トゥルメンタルとして考えてるし。言葉っていうのも、歌詞の内容よりも響きと
して使うことが多いんですよ。響き自体の意味っていうか。
今堀:ひとつの楽器と考えればね。
金子:そういう分野の中の歌ものっていうのとハッキリ分けてるんだけど。ティ
ポって声使わないよね?
今堀:昔は使ってた時期もあったけど、今はあえて断ち切ってるというか。実際
使うメンバーを入れるにはすごい大変だし。あと、声が入るなら歌詞があって欲
しいっていう思い込みみたいなものがあるし。
金子:それは言葉として意味がある歌詞?
今堀:そうなんだけど、おそらく、言葉で言いたいことが少ないんだよね。
金子:なるほどね。私いつも思うのは、嬉しかったり驚いたりすることがある
と、とっさに、あ、とかって言うじゃない。そういう感情の響き、声っていうの
は強いなと思うのね。声の持つものって。そういう意味で、今自分が追求してる
インス卜っていうのは、声の響きとか、そういう響きを使ったインストってい
う。
今堀:声の説得力ってすごいしさ。声が入ったというだけで安心して聞けるとこ
ろがあるしね。例えばライブでも、声出している人がいるだけで、そこでやって
るんだっていうことが確認できるじゃない。そういう意味ではすごい強いと思う
しね。
金子:声って、その声を出すだけでその人の個性が充分出てるじゃない。インス
トの場合って、また楽器っていうものを超えてない場含が多いでしょ。だから、
インストでも楽器を超えてその人の人間性みたいなものがダイレクトに出てくる
んじゃなければ、インストをやってても、あんまり自分にとっては意味がない感
じがしちゃうんだよね。楽器の絶対超えられない限界ってあるじゃない。ヴァイ
オリンだったら10音は絶対一緒には出ないとかさ。そういう限られた中で、どこ
まで自分の言葉っていうのが音として出ていくかっていうのが、自分にとっての
インストゥルメンタルの面白さかな。



     いろんな異種混合がしやすいのかな。インストだと。いろんなエッセ
     ンスを取り入れてミックスしやすい部分はある。




今堀:最近、日本以外のアジアの人とよく演奏してるよね。
金子:自分が書いたメロディがこんなにも違うふうになって、しかもそれがその
国の人達の間では共通する歌い方だったりするんだよね、それは面白かったな。
今堀:俺もアフリカ行った時に同じようなことを思ったんたけど、同じアフリカ
でもその国々で全然違うんだよね。それは、日本と韓国でも、隣り合った国で全
然違うっていうこともあるわけで。そういうことを確認できたかな。
金子:インドとかで、1弦ヴァイオリンがあって、ふーんとか思ってたわけ。
で、この前来たサーランギ奏者のメロディの歌い方を真似してたら、いつの間に
か一本指で1弦で弾いてたの(笑)。なるほどなと思ったんたけど、ああいう歌
い方をするには1弦で事足りたのかなっていう気がしちゃったの。西洋の楽器っ
ていうのは、ありとあらゆることができるようにすごい合理的に作られていて。
だけど、そのなまりみたいなものを追求できる良さって、限られた可能性の少な
い楽器の中から出てきたりするじゃない。そういうのが分かって面白かったな。
中国のと同じ胡弓みたいな形をした韓国の楽器があるんだけど、全然最初は知ら
なかったから、自分がやってる胡弓と同じ禅き方で試してみたんだけど、何か音
は線が細いし、弦はタコ糸みたいな太い糸だしって思ってたら、単にそれは張力
をグーッと押さえてやるだけで音程変えててさ。そこであの不思議な音が出るの
かっていうのが初めて分かったんだよね。あれは他の楽器でポルタメントで出そ
うと思っても、ちょっとニュアンスが出ない。
今堀:単純であればあるほど、身体に近づくよね。そうでないと何か表現力が小
さいというか。
金子:ギターなんてね、ヴァイオリンよりも2本も弦が多いじゃない(笑)。
今堀:悪かったね(笑)。
金子:すごい考えられた楽器でしょ。そういうのが逆にうっとうしくなる時あ
る?
今堀:フレットがあることとか?
金子:とか、そういう楽器のよくできてる部分が。
今堀:うっとうしいと思ってしまうと終わってしまうので(笑)。演奏しなく
なってしまうので(笑)。思わずにね、どんどん肉声に近づけていくっていうの
が大きなテーマでさ。演奏する時は、いつもそういうことばっかり考えてるけど
ね。
金子:ヴァイオリンだと、あー、弦の長さが足リない、とか(笑)。だんだんそ
うなるよね。最近ね、ノイズ成分の音と、美しい音、その両方とも何て美しいん
だろうっていう考えがあるんだけど、アジアの民族楽器って結構ノイジーだっだ
りするんだよね。それが自然だっだり。もともとヴァイオりンって雑音弾いちゃ
いけないとされてて、とにかくいつもきれいな音を出すようにっていう教育ばっ
かりしてきたわけで。不思議な感じがするんだよね。本当は表現したい、目指し
たいことって一緒でしょう。気持ちの芯にあるものって。
今堀:西洋人には虫の音がノイズに聞こえるっていうじゃない。
金子:そういうのがどこかで重なってひとつにならないかなって思っているの
が、アジア擦弦楽団の発展した形でいつかやりたいと思ってる世界擦弦楽団なん
だよね。
今堀:そういう理由があって音を歪ませてるわけ?
金子:それだけじゃないけどね。単にガーッとやりたくなるような時があって。
結構生活の中で気がつくと擬音を発してることってあるでしょ。
今堀:擬音ばっかりじやない(笑)。
金子:楽器はきれいな音しか出しちゃいけませんって学校では教えられてね。で
も自分では自然にいつも弾いてたからね。何か変だってずっと思い続けてきた
の。それで何となく、ポピュラー音楽とか、いろんなものに触れた時に一瞬光が
かいま見えたような気がしちゃったんだよね。そこらへんから徐々に。やっぱり
守っていく音楽をやる人達もいなきゃいけないんだけど、でも自分はそうじゃな
いと、その頃から感じてたんだよね。伝統を守っていくほうの人じゃなくて、何
か違うことをやっていくタイプの人間じゃないかと自分は思って。
今堀:若者はそうでなくちゃ(笑)。お家元にいるわけじゃないからね。
金子:でも、ギターとかって、始めた時にすでにちゃんとしたギターがあって、
世の中にギター・ミュージックもたくさんあったわけじゃない。私がヴァイオリ
ン始めた時って、ほとんどまだエレキ・ヴァイオリンっていうものが市販されて
なくて。少しずつっていう感じだっだんだけど。
今堀:ヴァイオリニストのやるポピュラー音楽っていうのは最近だったからね。
金子:ヨーロッパは結構あっだんだけど、あの頃はヴァイオリンでポピュラー
やってるっていうとプログレですか、それともカントリーのフィドルですかって
いう、そのどっちかしかなかったわけで。いろんな異種混合がしやすいっていう
のかな、インストだと。いろんなエッセンスを取り入れてミックスしやすいって
いう部分はあるよね。
今堀:でも、よくあるんだけど、民族音楽をそのまま取り入れてみましたってい
うのはね。
金子:あれにはね、常日頃ひどいなと思っちゃうけどね。Adiも最初、ワールド・
ミュージックの旗手とか言われて(笑)。そういうのだけは嫌なんだよね。
ちょっとおいしいところだけ取ってっていうの。
今堀:操作する、みたいなやり方で取り入れるとそういうことになっちゃうよ
ね。
金子:私は、そういうことよりも、外国の人間と音楽やるんだったら、やってる
その本人に興味があったりとか、その人の生き方を通して出てくる歌い方に興味
があったりするから。そういうところから自然に異種交配していけたらいいと思
うな。
今堀:もちろんそこで刺激を受けるんだけど、それを聞いた時にじゃあ自分はど
うかっていうことを考えていくと、初めてそれを吸収したということになるよう
な気かするけどね。



     よく演奏家どうしで言うんだけど、同じ楽器弾いても出てくる音が違う。
     だから音色は自然についてまわるものかなって。



 音色面でのこだわりという部分ではどうですか?
金子:私は、昔からプリ・アンプばっかり使ってるんですけど。ヴァイオリンっ
てどうしても原音が弱いんですよね。楽器がまだ完全にエレキとして完成されて
いないというところで。どうしても音が細くなりがちなのが嫌いで。とにかく太
くて、低音に芯のある音っていうのが好きなんですよ。もともとヴィオラの音域
のほうが好きなんですよ。どうしてもソロとかって高いほうに行きがちでしょ。
でも高いほうに行けば行くほど音が細くなっていくっていうのが嫌いでね。と
いって下のほうでばっかり弾いてても埋もれちゃうっていう。それでプリ・アン
プばっかり研究してきだんだけど、ミュージシャンにとってみれば、ほんの
ちょっとでも変われば結構嬉しかったりするじやない。市販されてるものだと、
なかなか難しい部分があるね。私の持ってる楽器は一台しかない楽器なんで。以
前に、その周波数特性とかオシログラフを使って調べてもらって、それに対応し
たプリ・アンプとかを作ってもらって。
 その点、ギターはいろいろな音色が出せますよね?
今堀:そうですね。もちろんいろんなこだわりとかはありますけど、あえて自分
の特徴を出すために人と違うとかいうことじやなくて、好みで、徹底的に好き嫌
いでやってます。
金子:すごいはっきりしてるよね。好き嫌いが(笑)。私なんか、ヴァイオリ
ンっていう楽器の、ギターとか他のいわゆるエレキ楽器に対するコンプレックス
がすごくあってね、原音を良くするためにっていうんで苦労してるけど。
今堀:ギターは、ノイズ・ギターっていうジャンルがあるほど、音色の幅が広い
からね。今、演奏家として、ノイズを出す人、きれいな音を出す人、ソロを弾く
人って、結構別れてて。音色だけに限って言えば、そういうところをつなげてい
きたいんだよね。カッティングしているような、ノイズを出しているような。結
果的に幅が狭まっちゃうのは危険性があって、それは気をつけているんだけど。
あと、自分の好きなバランスっていうのがあって、そういうところで判断して。
離れている音色のノイズとか、きれいな音とかをつなげていって、より幅がひろ
がっていけばいいなと思ってるけど。前にジョン・ゾーンとやってた時にノイズ
の成分がすごく多くて。何でだろうって本人と話してたら、やっぱりNYに住んで
るからだという答えが返ってくるんだよね。で、彼と一緒に演奏しに行ってみる
と、多少なるほどなと思うところがあって。いろんな人種が交錯して住んでた
り。そういうところでのバランスっていうのは自分で取っていくしかないのか
なって。音色としてはすごく幅が広いのが好きなんだけど、バランスは自分で
取っていくっていう。
金子:ヴァイオリンって確かにギターほど幅広い音色は出せないかもしれないけ
ど、今エレキだったらかなりいろんな音色か出せるじやない。でも、やればやる
ほどギターに近づいていくっていうことも否めないし。今は別に音色がギターみ
たいになろうと、MIDIヴァイオリンで他の音源を鳴らそうと、いいと思ってるん
ですよ。自分のフレーズとか自分の歌い方とかあるし。けど、ある人にとってみ
ると、飛鳥がヴァイオリンをやってるのにギターみたいな音をわざわざ出す必要
がなぜあるんだろう、もっとヴァイオリンらしさを追求してもしいんじやない
かって言う人もいるしね。それも一理あるなと思うけど、私、エレキだけじやな
くて、アコースティック・ヴァイオりンの部分っていうのも大切にしていきたい
と思っているので、それはある面、そっちのほうでずっと続けていけるかなと思
うんだけど。ノイズとかっていうことに関しても、ジョン・ゾーンのNYにいるか
らだっていうのは、結構他の国の人って自分の環境の中でできる音っていうのが
あると思うんだけど。そういう意味では東京とかって、あんまり自分の特定の環
境っていう意識がなくて。いい意味で言えばマルチだし。悪い意味で言えば別に
都市でも自然でもないっていうイメージがしてるの。自分の立ってる場所が、特
に個性的な、環境に影響されるような街であるっていう意識があんまりないの
ね。自分の中のノイズっていうのも、わりと私は自然が好きだから、自然の中の
きれいな音とか、自然の中のノイジーな音とか、そういうもののような気がす
る。
今堀:ジョン・ゾーンの場合はNYだからっていうことより、ふだん生活してる部
分っていうことだと思うんだけどね。前は東京だからとか、都市だからとか、そ
ういうことにこだわってみようかなと思ってみた時期もあったけど、途中からア
ホらしくなってやめたんだけどさ(笑)。そういうことはあとから考えてもね、
それだけじゃカバーできないところがあるはずだから。
金子:さっき、音と音をつなぎたいって言ったじゃない。私もわりと、音楽もそ
うだし、音もそうだし、間に興味があるの。何かと何かの。いつも自分はその間
をフラフラしていたい。そういうところで結構似てる面があるのかもしれない
ね。
今堀:よく演奏家どうしで言うんだけど、同じ楽器弾いても全然出てくる音が違
うじゃない。だから、人と違う音色を出すとか、特定の音色を追求するというよ
りは、自然についてまわるものなのかなって。
金子:私、自分が個性があるってずっと思ってなかった時代があって。すごく自
分が無個性だと思ってて、悩んでた時期があって。ある時、人からそんなことな
いよ、すごい個性的だよって言われて、パッとそれで開けて(笑)。急に安心し
ちゃったんだけどさ。そういう意味で、きっと作ろうとしなくても、自然にして
れば、音色にしても、自分の好きなもの、これが気持ちいいっていうものを選ん
でいけば、自然な個性なんだろうなと思うけどね。その追求を何かに阻まれた時
にやめちゃうと、中途半端な無個性みたいになっちゃうんだろうね。とことんま
で追求すれば、誰でも個性的な音になるんじゃないのかな。
 曲を作る時ってどうしてます?
金子:曲を作る時ってベース・ラインとメロディが先に来ますね。昔、ベーシス
トになりたいと思ってた時期があって。ヴァイオリンはコピーしたことはないけ
ど、ベースはコピーとか、やったりして。わりといつもギターのところって白紙
なんだよね(笑)。
今堀:そうそう。今回バンドものをやった時も、持って来られた曲にさ、どのく
らい重要なリフを作れるかっていうことに専念したっていうのもあるね。かえっ
て白紙で助かった。
金子:私もね、ギター・バンドが好きだったわりには現実的な興味がなかった
の。一番自分から遠くて。いつもアレンジする時、ギターのことっていうのが全
くなくて。でもなぜか自分のソロ・ユニットでは、今堀君とやりたくて、今堀君
がギターを持ってたっていうことなんだろうけど。ギターと接触する良い機会で
すね。
今堀:どうもありがとう(笑)。最近はシーケンサーで曲を作ってることが多い
んだけど、バンドで目指してる方向を充実させるっていうのが基本的にあって。
どういうことかっていうと、より言語に近づいていった曲が元にあるわけだけ
ど、そこからよりメンバーに浸透させて、その上で即興することとか。それが手
法になるまでつきつめられたらなと。現代音楽とかで、全然違う演奏をして、合
わさったところのウネリが面白いとかさ。即興でも、記号があってそれを繰り返
すとかあるんだけど、それよりもっと有機的にしたいんだよね。それぞれのメン
バーの言語は違うんだけど、それが自由になまって喋った時に、偶然で終わらな
いような、バンド内の言語体系みたいなのができると面自いなと。
金子:それは結構キそうだね。
今堀:今まで何となくなまってたものってブラック・ボックスに入れられてたん
だけど、それをハッキリした形で譜面にして、細分化した音符で出すわけ。で、
おれは俺の言語だっていうふうに説明して、それをメンバーに渡して、こういう
なまり方があるって。その上で即興のところまでいけると面白いよね。あやふや
で終わらせないで。それがひとつの方法だと思ってる。
金子:時間がかかりそうだけど、バンドじゃなきゃできないよね。ティポならで
きるでしょう(笑)。



Player '92年11月号より