今堀恒雄

TSUNEO IMAHORI



とにかく、自分が気持ちいいかどうかで判断しているので。自分が気持ちいいと
思ったら多少難しかろうが難解だろうが、気持ちいいことは伝わるはずだと。



 ジャズ・フィールドから出発し、個性的なギタ−・スタイルを持つ今堀恒推。
山下洋輔や梅津和時、金子飛鳥のユニットをはじめ、高野寛のサウンド・プロ
デュースも手がけるなど、ジャンルを超えて幅広く活動している。そして、彼の
バンド、ティポグラフィカでは、あらかじめ計算された細かいリズムの変化とイ
ンプロヴィゼイションによリ、強力なグルーヴを生み出すという方法論で、独自
の展開を行なっている。リズムの“訛り”に注目することで生まれたというこの
作曲法は、もしかするとバンドのグルーヴをも解き明かす鍵なのかもしれない。



今まで訛りとかがブラック・ボックスに入れられてきて。それを解析して譜面に
起こすのが最初の試みだったんです。



 ティポグラフィカでは、いわゆるAメロ、Bメロ、サビという構成は全然
ないですよね。最初はどうやって曲を作っていったんですか?
 ゴールデン・パロミノスとかマサカーとか。ああいう、今までの即興とは
ちょっと違った形、短いテーマをグルグル回して崩壊していくような形が新しく
感じられて。それを違った方向で試してみようということで始めたんですけど。
最初は、即興だったので、なかなかその意図がメンバーに伝わらずに、ただワッ
と破壊して終わりとか、中間部を楽しむことができなくて。で、ちょうどその
頃、山下洋輔さんのアフリカ・ツアーがあって。向こうの民族音楽のミュージ
シャンの、独特の訛りとか歌い方とかに触れて。日本人の自分にも、訛りとは言
わないまでも、独特の歌い方とかがあるはすだという考えを持ったのがきっかけ
なんです。その頃、シーケンサーを手に入れて、クォンタイズしないままの、自
由に訛った歌い方をそのまま譜面に起こしていって。それをメンバーにとりあえ
ず吹いてもらったり、叩いてもらったり。それをさらに、メンバー個々の歌い方
に直していって。というのが基本的にあるんです。
 それって、かなり大変な作業ですね?
 そうですね。シーケンサーのない頃は頭の中で構築していたので、かなり大変
でした(笑)。
 それ以前に曲を作っていた頃は、そういう技法とは全然別に?
 そうですね。そういうことはまだ目覚めていなかったんで。単に構築されたも
のでしたね。以前はギター・トリオだったので、ギターのリフが中心になって。
 でも、マサカーやゴールデン・パロミノスの方法が、アフリカの音楽な
んかとつながるとは。
 そうですね。崩壊していく過程で、今までは16分音符、32分音符できっかり割
り切れていたもの以外の音符がどんどん出てきまして。そういうのはいろんな音
楽でもあったと思うんですけど、それをもっと具体的な方法論として、作曲上で
表現できないかと思ったんですよ。最初はどうしていいのか分からなくて、即興
に頼ってたんですけど、訛りというか、そういう歌い方が自分にもあるはずだと
いうのにまず気づいて、で、アフリカ行ってそれを再確認して、具体的な方法と
してツールとしてシーケンサーを使い始めたという、そういう流れです。模索し
てた時期は長かったですけど。
 単に即興で始まって即興で終わるんじゃなくて、その間に構築したものが
はさまっていたほうが面白い?
 基本的にはそうですね。ただ、これからの段階として、マサカーに立ち返るわ
けではないんですけど、作曲の技法として、訛りとかが曲の上で出てきて。次は
それがインプロヴィゼイションに還元されてくればと思ってるんですけど、なか
なか難しくて。
 最初にシーケンサーを手に入れた頃の話なんですけど、そういう即興を
やってて、シーケンサーへ向かうという発想にはなかなかならないと思う
んですけど?
 そうですね。弾いたままを再現してくれるし、あとはその瞬間に思いついたも
のを記憶しておくには、人間だと限界がありますけど、それをある程度超えたと
ころで蓄積できるので。そういう意味では、シーケンサーを手に入れてからはす
んなりと方向が見つかったというか。ただ、音を出しちゃうと、それは縛られて
しまうというのがあるので、その辺はバランスが大事なんですけど。
 それを今度はバンドに移していく時、メンバーはそのやり方をすんなり
と受け入れてくれました?
 ある程度構築度が高くて、かなり難解でも、元になってる歌とかリズムとか、
やりたいことがはっきりしていれば、納得してやってもらえたかなと思うんです
けど。
 バンドの音になるには時間がかかりました?
 最初はすごく時間かかりましたね。そういう形で持っていって、頭で収まり切
らない部分をシーケンサーに入れて作って持っていった曲は、l曲に半年くらい、
再現するのにかかりました(笑)。最近は、譜面渡してテープ渡して、再現す
るっていう作業にだいぶみんな慣れてきたので、3〜4回やれば、だいたいできま
す。
 同じシーケンサーで作曲しても、ガイドに使うことはあっても、バンド
がそれを再現するという形態はあまりないですよね?
 どっちにしろ、人間でやりたいんです。単にそのままやるんだったら、シーケ
ンサー流して、僕が1人でギターを弾けばいいわけですから。ワン・フレーズ、ワ
ン・フレーズが僕の歌い方なんですけれど、それを表記した楽譜を渡して、各々
のメンバーに自分の歌として取り込んでもらう作業っていうのがリハーサルだと
思うんです。それである程度、自分の歌と変わってきても、それは喜こばしいこ
とだし。こういう歌い方があるんだよ、というガイドですね。今までとちょっと
違うけれども、はずれた歌い方でも、こういう歌い方があると。その、はずれた
歌い方と、はずれた歌い方が組み合わさって、こういう曲になってて。そういう
歌い方でないと、成り立たない曲の場合が多いので、そこを押さえてくれれば、
あとはどうやってくれても構わないんです。
 そうやって、最終的にバンドという形態を取っていることについて、こ
だわりはあるんですか?
 そうですね、作曲という作業に関しては、シーケンサーでかなり取り込んで
持っていくので、そこである程度完結しちゃうんですよ。それはそれでテープに
残したから、もういいんです。今まで訛りとかブラック・ボックスに入れられて
きて、それを少しでも分かるところまで解析して譜面に起こしてみようというの
が、最初の試みだったんで。その、残ってる未知の部分への憧れというか、そこ
へも踏み込んでいきたいんだけど、それは、テープのまま、シーケンサーで表現
してしまったら、その解析したところで終わってしまうと思うんですよ。それ以
上のところは、各々の人間に期待すると。
 尽きないですね、訛りの追求は?
 基本的には自分というものがあるので、自分が気持ちいいかどうかっていうの
が基本ですから。難しくなっていくということはないと思いますよ。どんどん見
えてくるということのほうが多くて。
 よく、奇をてらって変拍子を導入する人っていますけど、そういうもの
では全然ないと。
 そうですね、それが危ないところで。最初から最後まで、自分の快感を原則に
していないと、奇をてらったものになりますよね。それに関してはそんなに難し
いと思ったことはなくて。とにかく、自分が気持ちいいかどうかで判断している
ので自分が気持ちいいと思ったら、多少難しかろうか難解だろうが、気持ちいい
ことは伝わるはすだと。
 シーケンサーにフレーズを入れる時、その段階では即興なわけですか?
 何か作ろうと思ってすぐにシーケンサーに向かう場合は、頭で練ってからとい
う場合と、両方あるので。最初から頭にある場合は、それをそのまま移してい
くっていう感じですけれど、何か作ろうとすぐにシーケンサーに向かった場合
は、即興ですね。ま、頭の中で作ったといっても、それも即興と言えるかもしれ
ないですけど。
 何回かプロセスを経て、最初の即興が別物として、また生まれ変わる、
みたいな?
 1曲の中で、自分でシーケンサーに向かっている間でも、そういう入れ替わりと
か、意味が変わってきたりすることがかなりあるので。それはふつうの作曲でも
そうだと思うんですけど、基本的に、最初はワン・アイデアで始まるので、それ
が首尾一貫してあれば、そんなに復雑な感じは、自分では持ってないんですけ
ど。
 一応、1曲ワン・アイデアで?
 昔はいろんなものをどんどん詰め込んで曲作ってたんですけれど、それだとメ
ンバーも聞いてるほうもついてこれないし、自分でも散漫な感じを受けて、印象
が薄れるので。最近は、l曲ワン・アイデア、ツー・アイデアぐらいで。やってい
るうちに重要でないところはどんどん排除していったり、ライブやってるうちに
どんどん変わっていくので。
 結局、最近の形になるのににどのぐらいかかったんですか?
 1年半から2年前なんで、結成してからは4〜5年かかってますね。結構長い道の
りで(笑)。いろいろ面白いことができそうだという手応えはあったので、これ
だけ続いているんでしょう。ティポを始めた時は、崩壊という言葉をキー・ワー
ドに始めたことは始めたんですけど、最近は、構築してく方向、その面白さを追
求する時期というものがあって。今もそうなんですけど、訛りも含めた構築、と
いったものが最近の曲だと思うんで。これからの課題は、さっきも出ましたけ
ど、それをインプロヴィゼイションに還元していく。メンバーに、そういう喋り
方とか自分の伝えたものをそれぞれの言葉にしていく、それを浸透させる時期
だったと思うんです。最近、かなり自分からそういうプレイをしてくれるように
なったんで、そろそろそういうことができるかなと思ってます。でも、曲の作り
方として構築度の高いものでそういうことをしたいので、かなり難しいなと思っ
てますけど。
 その訛りの問題についてなんですけど、リズムでジャストより速かった
り遅かったり、もしくは数学的に割り切れないものとかはあると思うんで
すが、メロディとか和声に関しても訛りというのはあるんでしょうか?
 和声に関しては、今のところ考えてないんですけど、たとえば、シーケンサー
の上で自由にメロディを弾いたとしますよね。すると、今までの曲だと、5連だっ
たら5連の中で、2つ目、3つ目というふうに歌っていくのがふつうだったと思うん
ですけど。実際に弾いた後にデータを見てみると、もっと細かい範囲の中で、1拍
の中で、ここは5連の頭で、後ろは6連のいくつ目とか。そういうのはたぶん、み
んな弾けばふつうだと思うんです。ただ、それは絶対そこが気持ちいいと自分で
は思うんですね。そういうものが今まで訛りだということで分けて捉えられてた
のを譜面に起こそうと思ったんです。あとは、実際に演奏している上で、今まで
はl6分が最小単位であったと。そういう意識の中では5連とか6連で弾いているこ
とが、適当に訛ってるんだろうと思っていたことが、5連とか6連とかに意識が細
分化されてくると、実際そこにハマッてたということが、どんどん分かってくる
と思うんですよ。それを突き詰めていって、しかもまだ見えない部分っていうの
が訛りというふうに言えるんじゃないかと。
 節回しというか、どこまでタメて、アクセントがどう動いたりとか。
 そうですね。たぶん、音程に関してもそれはあると思うんですよね。日本以外
ではI2音以上を備えている音楽もありますから。ただ、それは今のところは考え
てないです。主にリズムに関しての訛りで。
 その訛りの問題は、生のバンド編成に移した時に1人1人の解釈でズレが
出ると思うんですけど?
 そのズレが楽しいというか。すごく幅があると思うんですよ、ジャストのビー
トというのは。ある一定のパルスの中でどういうふうに歌おうと、気持ち悪いと
いうことは絶対ないと思うんで。解釈が違って困る場合というのはあんまりない
です。
 むしろ、違わないと、バンドでやってる意味がないというか?
 そうですね。ここは絶対、点を合わせてほしいというところはたまにあります
けど、そういうところは押さえて。
 ドラムがある拍数を引っ張る時と、その時のサックスの譜割りの取り方
が変わっていたりとか。そういうのが個人の訛りの違いというか?
 そうですね。よく、冗談でリズム隊のメンバーが、人生1拍って言うんですよ
(笑)。どういう単位で捉えていようと、どこに1拍1拍の単位を置こうが置くま
いが、どこかに自分のポイントっていうのはあるはずなんで。それがありさえす
れば、どんなものでもいいんじゃないかと。で、その訛りというのは、もう少し
狭い意味で言うと、さっきも言ってた、点に対しての揺らぎとか、周りで遊ぶよ
うな感じとか。
 結局、自分のポイントを見つけられるかどうかっていうことですね?
 ええ。結局、気持ちいい演奏ができるか、ということですね。常にそれを念頭
に置いてあれば、たぶん、そんなに難しいことじゃないと思いますけど。
 今まで、バンドの気持ちよさっていうのは、基準はあったにしてもそう
いう理論づけはなかったじゃないですか。音を出してみて、波長が合う人
でグルーヴができるものだという考え方だったんですけど、そうやって細
かく分析していくと、実はグルーヴの出ているバンドは、知らず知らずの
うちにポイントが合っているという?
 そうだと思います。実際はその演奏で気持ちいいはずなのに、ズレていること
がいけないとかっていう、ただの意識の持ち方の違いで、気持ちいいはずのもの
が気持ち悪くなったりしていることも、多々あるんじゃないでしょうか。ズレた
りすると気持ち悪いという考え方をしていると、合わせようとか、合わさせよう
とかいう葛藤が生じて、気持ちよくなくなりますよね。そういうことをまず排除
したかった。そうすると、自然にグルーヴが生まれるんじゃないかと。
 各自の訛りがあるっていうのを見つけたのが大きかったですね?
 ジャズの即興演奏とか、クラシックも含めてですけど、あるパルスの中で自由
に歌うということは、よくあることですよね。それを、意図的に曲に移そうとし
たところからティポが始まってるんじゃないかと思うんですけど。



人数が多い形で、しかも聞こえ方としてはすごく聞きやすくて、ポップなままで
即興できたり、崩壊したりとか…。



 今堀さんが、他のバンドでやる時にも、その考え方は導入しているんで
すか?
 人と一緒にやる場合は、相手の人が理解してくれないと、奇抜なものに終わっ
てしまうというきらいがあります(笑)。何やってるかどうかっていうことは分
かってもらえなくてもいいんだけど、それが気持ちいいと感じてもらえれぱ、十
分に生かせるんじゃないかなと思うんですけど。
 MEATOPIAというバンドでも即興インストという方法をとってますけど?
 あれは主に横川理彦さんのセンスが元になってるんですけど。あ、これはひど
いって、それでセンスのいいもの(笑)。これはないだろうっていって、すごい
気持ちよかったりとか、センスいいなっていうものを目標にしてるんです
(笑)。こんなことしちゃうかっていう。完成された形とか美しさというのでは
なくて。自分がバンマスであるとか、曲を書いてあるかどうかで、ずいぷん身の
置き方が違ってくるので。それは、手を抜くという意味ではないんですけど。
 今のティポグラフィカの曲の中には、作曲を即興でやってる部分という
のも入っているんですか?
 曲間とか、長いインプロヴィゼイション、人に任せるフリーなスペースという
のは、ある程度はありますけど。ただ、まだそこまでの段階なんです。曲によっ
ては、ひとつメロディがあるだけで、あとは全部即興なんですけど。人数が少な
ければ少ないほど、そういうのはやりやすいと思いますね。で、それを人数が多
い形で、しかも聞こえ方としてはすごく聞きやすくて、ポップなままで即興でき
たりとか、崩壊したりとか、そういうことに今興味があるんです。他の場所で
は、その場でどんどん作曲してしまうとか、楽音でなくてもいいものとか、そう
いうものもやってはいますけど、ここでやることはそういうことかなと。
 作曲の範囲っていうのはどういうふうに考えてます?
 ティポでもたぶん、区別しにくい曲もあると思うんですけど。基本的には最初
にフレーズを提示した人が作曲ということになるんじゃないかな。それ以上突っ
込んでいくと、どこまでが作曲か分からなくなりますからね。
 ポップスの場合は、メロディとかサイズを決めて作った人が作曲者とい
うことになりますけど、その考え方でいくと、ティポグラフィカでやって
る訛りの問題とかは作曲じゃないということも言えるわけで。本当に何か
を作るという考え方でいけば、もちろん訛りを作るというのも作曲という
範囲に入ると思ううんですけど?
 その辺はあやふやですよね。ある規則として、こう訛りましょうって提示した
人が作曲家で。でも、実際に出てきたものがフレーズだったりしたら、本当に分
からなくなりますよね。これからティポで何かやっていくうちに、すごく提示す
る部分が少なけれぱ、作曲というものがバンドになったりとか、そういうことは
起きてくるかもしれないですね。それに絡んでですけど、どのフレーズにも必
ず、作曲者が出てれば出てるほど、メンバーに伝わりやすいですし。演奏してか
らも、そのフレーズのクセとか、メンバー各々の歌い方に変わっていった場合で
も、いい結果を生む場合が多いですね。
 作曲する場合は、基本的にギターが多いですか。シーケンサーの場合だっ
たら鍵盤でとか?
 最近はギターのフレーズが後回しになってくることが多いんですよ。それは、
ああ良くないと思って、ギターを元にしたりとか、いろいろループしたりしてる
んですけど。基本的にはシーケンサーと鍵盤で作ってますね。ギターのクセを出
したい場合と、そうじゃない場合があるんで。他の楽器でも、ギターで弾いたこ
のニュアンスが出て欲しいっていう場合には、それを想定して書いたりしますけ
ど。
 ホーン関係も鍵盤で作ったものを渡して?
 そうですね。キーボーディストの音色に関しては、ほとんど任せているんです
けど、ある程度のイメージを伝えて。あとは、サックスもトロンボーンもはっき
りした楽器なんで、それはサンプラー使って、その音で作ってます。
 その場合はサックスを想定して作っていくんですか。本当にに自由に鳴っ
ているものをやろうとしても、極端な話、どうやってもできない指使いと
か、音域を超えたりとかっていうこともあると思うんですけど?
 一応想定して作りますけど。でも、思いついてしまったものはしょうがないん
で、誰かに割り振ったりとかしますけど(笑)。その辺はバランス感覚で。
 演奏って個人によって、得意なテンポがあると思うんですけど、その
ウィーク・ポイントに当たるものがくると、大変じゃないですか?
 今までは、逆にそのいいところが出るようにとか、そういうことを気にして、
得意なものを割り振っていくようなことを考えてたんですけど、それを続けてい
ると、作曲上で煮詰まってきたりするんですよね、ある時期になると。
だから、ある程度無視するのも面白いかなと。
 バンドの編成も関係あります?
 ありますね。この曲はもっとデカい編成でやったほうがとか、そういう曲も中
にはあります。そういう曲ができてしまった場合は、しょうがないので(笑)、
ライブではバンドの編成でやる、またはティポではやらないで、レコーディング
用に取っておこうということもあったりします。
 今の2管ある編成というのは、初めから頭にあったんですか?
 いや、最初はギター・トリオにキーボードが入って。キーボードはノイズ担当
だったんです(笑)。そういうノイジーなものと、すごく分かりやすいメロディ
のものを並行してヤッていこうと。昔は二元論的な考え方をしていたので。そう
いう役割としてサックスをまず加えて。で、シーケンサーを使っているうちに、
声部とかが増えてきて、管が1本じゃどうしても足りなくなってきたんです。それ
でトロンボーンを入れて。結構変則的なんですけど、ソプラノとトロンボーンの
幅からいうと。でも、その幅の間にいろんなものが詰まっているのが、かえって
バンドのサウンドの特色に結果的になっているという感じですね。声部が足りな
かったから1管増やしたというのが理由ですね。
 結果的になったにせよ、バランス的には面白いですよね?
 そうですね。本当はパーカッションもう1人に、もう1管いると、どんな曲でも
ある程度対応できるので、一番いいんですけど。そうなると、単純にバンドの運
営が大変なのと(笑)。あとは、要らない曲も出てくるでしょうね。そうする
と、ベーシックなものをある程度少なくしておいたほうが、動きやすいので。や
るとしたらゲストでという感じになりますね。
 作曲をしていく上で、自分の思った曲を再現するための楽器の指定とい
うのは、メンバーにもするわけですか?
 キーボードに関しては、最近はほとんど言わないですね。自分で持っている音
色は限りがあるので、それでだいたい作って渡してしまいますけど。管に関して
は、これはソプラノ、テナーっていうのははっきりしてます。ドラムの譜面もか
なりびっしり書くんですよ。ただ、それはこいう歌い方であるという部分が伝わ
れば、あとはフレーズは任せるという。
 作曲の中に音色という部分はあります?
 イメージという段階までならすごくあります。ただ、キーボードは本当に無限
にありますよね、音色に関して。それはキーボーディストじゃないと分からない
ところもありますから、ある程度任せますけど。ただ、イメージはしっかり伝え
るという。でも、曲の解釈がみんなしっかりしているので、だいたい思ったとお
りの音が出てきますね。

Player '93年12月号より